日記

■2009年11月30日(月)21:53  青猫横町31
 起きあがったはたけさんは、もう具合が良くなってしまったみたいで、うみのさんにもう一人分素麺を茹でてもらって食べ始めた。
 大根おろしとすりおろした生姜を汁の中にたくさん入れて、ぞろぞろと麺を啜っている。
 食べ終わってしまったわたしは縁台の上で、寝そべっているアオの耳をいじっていた。アオの耳は大きくてすべすべで冷たくて触っていると気持ちいい。アオは嫌がってぱたたた、と小刻みに耳を振る。それが面白くてわたしは繰り返しアオの耳を指でつまんだ。
「ぎりぎりまで我慢しないで、さっさと薬を使えばいいのに」
 食器を片づけながら、うみのさんが言った。はたけさんが元気になったとたん、小言が始まっている。
「ノドカがいてくれたからよかったけど、いつもそんな訳にはいかないんですからね」
 うみのさんの言葉にわたしの名前が出てきたので、背中を向けたままでわたしを耳をそばだてる。
「ノドカがお医者さんを呼んでくれたんですよ」
 うみのさんは怒った顔でいうけれど、とても心配しているのが分かる。
「そういえば、イルカ先生、仕事は?」
 はたけさんは聞いているのか、いないのか、ちがう話を始めてしまう。
「早退してきたんですよ!あなたが倒れたって聞いたから!」
 うみのさんは声を大きくした。わたしはうみのさんに味方してあげたい気持ちになった。
「ノドカがお医者さんを呼びに行ってくれて、お医者さんが式を飛ばしてくれたんです!アカデミーまで!俺は授業の途中で飛んで帰ってきたんですよ!」
 顔を赤くして捲し立てるうみのさんに、はたけさんはきょとんとした顔をしている。
「昨夜だって、無理しないでさっさと寝なさいって言ったのに!シーツだって替えないままで−−−」
「イルカ先生、今ここでそんな話しちゃっていいの?」
 はたけさんはわたしの顔をちらっと見た。
 うみのさんは真っ赤になって「うああああ、もう!」と叫んで、台所へ逃げ込んでしまった。
 それから、洗面所の洗濯機から洗濯物を取り出して、どすどすと足音を立てて出てきた。居間を抜けようとするうみのさんの腰に、箸を銜えたはたけさんがすがりついた。
「イルカ先生、怒っちゃイヤ」
「バカ!」
 うみのさんははたけさんの口からお箸を取り上げて、ぱしんと卓袱台の上に置いた。
 しゃがんだ拍子にはたけさんががっしり抱きついてしまって、うみのさんはしりもちをついた。


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イチャイチャしやがって!
ところで、夢小説ちゃんと楽しめた方はいらさるんでしょうか?
コメント
  • はい(2009/11/30 23:07)
    夢小説見れました、XPのFirefoxで。ナルトのキャラで試してみたんですけど、何故か照れました。掲示板の続き楽しみにしています。
  • はじめ(2009/12/01 23:44)
    おお!ご報告ありがとうございます!ちゃんと動作してるみたいで良かったです。ホッ。携帯やPHSからご覧になった方々もいらさるようです。

■2009年11月29日(日)18:07  馬鹿な奴だとお思いでしょうが…
「青猫横町」夢小説バージョンをアップしました。
しかし、ノートン先生に阻まれて自分では動作確認が出来ません。
アップする前はちゃんと動作してるんですけど。
DreamMaker1にテキストデータを流し込んだだけなので、不具合があっても対処出来ません。(おい!)
見られる方だけ楽しんで下さい。
ちょっとした、出来心というか、お遊びなんで、あんまり不具合が多いようなら下げます。
それまで、遊んでみて下さい、という主旨です。

■2009年11月28日(土)22:48  青猫横町30
 うみのさんが素麺を茹でてくれて、一緒に卓袱台で向かい合って食べた。
 はたけさんの庭で取れた胡瓜を薄く切って、うみのさんは素麺の鉢に浮かべた。
 うみのさんは鶏肉のそぼろと厚焼き卵も作ってくれた。卵焼きはちょっと焦げているけど甘い。
 アオがやってきて、自分も欲しそうに卓袱台のそばをうろうろした。ほうっておいたらだんだん調子にのって、わたしの膝に前足をのせて、伸び上がってわたしの食べている卵焼きにふんふんと鼻を鳴らした。
 さっき、はたけさんの吐いた地面の臭いを嗅いでいた鼻先を近づけてくるから、わたしはお箸を持っていない方の手でアオを押しやってどかせた。なのに、またアオはわたしの口元に鼻を近づけてくる。座っているわたしと、伸び上がったアオの顔はちょうど同じくらいの高さになる。わたしが身を捩ってアオから逃げようとするのに、しつこく迫ってくる。
 うみのさんが卵焼きを一つ摘んで、床に置いた新聞紙にのっけた。
「ほら」
 うみのさんに呼ばれて、アオはそっちに寄っていった。まだほかほか湯気の立っている卵焼きに鼻を寄せてにおいをかいで、くしゃん、とひとつくしゃみをした。
 うみのさんが笑う。
 猫舌のくせにアオはまだ熱い卵焼きを、かふかふと音立てて食べ始めた。
 わたしとうみのさんもまた素麺を食べ始めた。
 お箸で麺をすくうたび、ガラスの鉢の中で氷がからころと音を立てた。
 遠くで蝉が鳴いている。まだそんなにたくさんの声じゃない。
 いつのまにかお日様の光が強くなっていて、窓から差す光が当たっている畳の上は熱そうだ。わたしとうみのさんのいる部屋の中はひんやりして静かだった。
「せんせい」
 小さくかすれた声がした。
 うみのさんは、さっと振り返ってはたけさんのそばに寄った。
「起きたんですか」
 はたけさんの顔を覗き込んで静かに言う。
 はたけさんに掛かっている毛布の端が日にあたって、温かいにおいがしている。
「あの、ね」
 はたけさんは小さな声で、恥ずかしそうに言った。
「俺、縁側に−−−」
 うみのさんはにっこり笑って、はたけさんの髪を梳いた。
「大丈夫。もうきれいに埋めてしまいました」
 それから、
「いい肥料になりましたよ」
と言った。
 はたけさんは「先生のバカ」と拗ねたように言うと、毛布に顔を埋めてしまった。頭を撫でるうみのさんの手を握ったまま。
 うみのさんは、ははは、と声を上げて笑った。


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恥じらうオトンと、がさつなオカン。

■2009年11月24日(火)21:33  青猫横町29
 庭から部屋にはいると、はたけさんの様子をもう一度見てからうみのさんは「ご飯にしようか」と言った。
 わたしが部屋に入ると、アオも一緒に庭から部屋に入ってきた。
 アオは入っちゃダメ。
 わたしが外へ押しだそうとしたけど、アオはわたしの手をすりぬけて部屋に入ってこようとする。アオは大きくてつるつるの毛皮で、わたしの手の中に入りきらない。
 しばらくアオと押し合っていたら、うみのさんがひょい、とアオを抱き上げた。
「足をふいたら入っていいよ」
 洗面所にぞうきんがあるからと言われて、わたしははたけさんの家の洗面所へ入った。すみっこに青いバケツが置いてあって、ぞうきんが何枚か掛けてあった。わたしは一番きれいそうなのをえらんで持っていった。
 庭の水場で濡らして絞ると、うみのさんが抱っこしているアオの足を一本ずつ、きれいにふいた。アオは濡れたぞうきんがいやなのか、ばたばたと暴れたけれど、うみのさんはしっかりとアオを抱いていてくれた。
「ほら、もういいぞ」
 うみのさんが手を放すと、アオはぱっと逃げ出して、縁台の上の端っこまでいくと、せっせと足を舐めだした。うみのさんは笑って、立ち上がるとぞうきんを洗面所に持っていった。
 わたしは座って、アオが体中を舐めているのを見ていた。
 うみのさんは台所でお昼ご飯の支度をはじめたみたいで、ごそごと音が聞こえる。
 はたけさんは目を閉じたまま、毛布にくるまって動かない。
 少し心配になって、近くに寄ってみた。じっと見ていると、はたけさんの胸のあたりがちいさく上下しているのがわかって安心した。
 大股の足音がして、うみのさんが台所から戻ってきた。うみのさんはこっちを見ないでまっすぐ寝室へ入っていった。襖のむこうからごそごそと音がして「あーーー」とか「うーーー」とかうみのさんが言っているのが聞こえた。
 しばらくすると、真っ赤な顔でシーツを抱えたうみのさんが出てきた。また、こちらを見ないで真っ直ぐに洗面所に入っていった。
 洗面所からゴンゴンと洗濯機の回る音が聞こえてきた。
 それに混じって、うみのさんの唸り声がした。


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洗濯は朝のうちにやっておいて欲しかった。

■2009年11月23日(月)21:18  青猫横町28
 お医者さんが帰ると、うみのさんははたけさんのそばに座って、じっとはたけさんの顔を見ていた。
 はたけさんの顔はもう苦しそうではなかったけれど真っ白だ。
 うみのさんははたけさんの前髪をかきあげて、とても大切そうにほっぺたを撫でた。
 傷のある方の眉を指先で辿って、髪を梳いた。
 てのひらで痛いのを吸いとっているみたい。
 わたしはうみのさんの手がやさしく動くのを見ていた。そしたら、庭から「ナァーン」と声がして、アオが歩いてきた。
 さっき、アオがわたしを置いて逃げ出してしまったことを思い出してわたしはちょっと怒った。
 今頃、やっと戻ってくるなんて。
 はたけさんが大変だったんだからね。
 わたしはアオを叱ってやろうと思って縁台に出た。アオは縁台の下で地面のにおいをかいでいた。縁台の下の地面にははたけさんの吐いたものが広がっている。。
 さわっちゃダメだとアオを追い払おうとしたけど、アオは耳をうしろに倒して鼻をくっつけそうにかがみこんでにおいを嗅いでいる。
 わたしが縁台の下を覗き込んで、アオを追っ払おうと手を振っているとうみのさんが立ち上がってやってきた。
「ああ、吐いちゃったのか」
 うみのさんは地面に広がったものを見ると、つっかけを履いて縁台を降りた。庭の畑の畝をよけながら庭を突っ切り、隅にあるちっちゃな小屋の戸をがこがこと鳴らして引いた。はたけさんの庭仕事道具が入っている物置だ。古くて建てつけが悪いのか、いつも扉がなかなか開かない。
 うみのさんは苦労して戸を細く開くと、中に手を伸ばしてスコップを持ってきた。そして、はたけさんの吐いたあたりの地面を掘り返してきれいに埋めた。
「これで、よし」
 地面に突き立てたスコップに寄りかかってうみのさんは頷いた。縁台の下のそこだけ、湿った黒い土が盛り上がっている。
「ノドカ」
 うみのさんに呼ばれてわたしは顔を上げた。
「ありがとう。お医者さんを連れてきてくれて。すごく助かったよ」
 うみのさんは優しい顔でにっこり笑った。わたしは恥ずかしくなって俯いた。


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はたけさんのゲロはロマンです。(違)

■2009年11月22日(日)23:59  青猫横町27
「治療というのは、目の治療かね?」
「いえ−−−彼は一度、チャクラを使い果たして、それからチャクラを練れなくなったんです。もちろん、中央の病院で様々な治療を受けました。でもチャクラは戻らなかった。だから退役して忍をやめました」
 チャクラを練れなければ忍術は使えないというのはわたしも知っている。この里の子供はみんな小さい頃に「てきせいしけん」を受けて忍者になれるかどうか確かめる事になっている。わたしもうんと前に受けた事がある。
「綱手様も手を尽くして下さって治らなかったものを、今更治せるものでしょうか?」
 うみのさんに訊かれて、お医者さんは腕組みしたまま唸った。
「さてなあ。チャクラが練れなくなるというのは経絡の流れが滞ったり、乱れが生じているという事だろうし、やはりこういった薬で気長に代謝を整えていくしかない、というのが大方の医者の見解だと思うが」
 お医者さんは粉薬の方を指差して言った。
「頭痛の原因は、憶測ではなんともいえんな」
 うみのさんはお医者さんの言葉に黙ってうつむいた。
「しかし、度々こんな事があるのでは不安だろう。あんたも働いているようだし、病人と子供だけを家に残している状況というのも心配だしな。娘さんもそろそろ学校へ上がる歳じゃろう?」
 お医者さんの言葉にわたしはどきっとした。恐る恐るうみのさんの顔をうかがうと、うみのさんは困った顔で笑って、
「いえ、娘ではなくて。この子はお隣の子なんです」
と言った。
 お医者さんはぱちぱちと瞬きをして
「ああ、そうか、そうか。わしゃ、てっきり…」
と焦ったように笑った。うみのさんはまた少し赤くなった。
 お医者さんは鞄から何枚かの紙切れを取り出して、何かを書きつけた。さっき、うみのさんを呼ぶのに使ったのとおんなじ鳥の形をした紙切れだ。
「これを投げればうちの医院に届くようにしたから、何かあったら呼びなさい」
 お医者さんは鳥の紙をうみのさんに渡して言った。うみのさんは頭を下げて、「ありがとうございます」と言った。


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そんなわけで退役カカシです。

■2009年11月18日(水)21:02  更新
アンジェリークのworldly thoughts「似てるよね!?」
アリオスの項に霧風疾風追加。
疾風兄ちゃんはカッコイイお人だと思っていたのに。
コメント
  • こおもり(2009/11/19 18:04)
    ありがとうございます。疾風の苗字は「霧野」なので訂正よろ。いや、似てる部分は「外見、裏切り者設定、神出鬼没、薄幸、色素薄い」と、カッコイイ部分だけだから大丈夫ですよ(?)でも私はカバ丸派だけど。ついでにカバ丸と疾風の関係はナルトとサスケに似てない事もない
  • はじめ(2009/11/19 20:39)
    直しましたよん。私もカバ丸は可愛いと思います。ちょっと全巻通しで読んでみたくなりました。ところで沈音様は…?
  • こおもり(2009/11/19 21:23)
    沈寝様はロスマリネタイプだけど受けっぽすぎて特に萌えなかったなあ。でもカバ丸との友情はなんとなく好きでした。BL的な匂いも漂わせつつ女性キャラも可愛くて良い漫画だった
  • はじめ(2009/11/22 00:48)
    私は沈音様にくっついてる女の子が好きでした。美人で秀才なお嬢様なのに沈音様のためならいくらでもバカになれそうなとこが。忍者物の少女漫画では「かん忍!茜」の伊集院さんとお父さんの年の差カップルも好きだった。伊集院さんはクールビューティだったなあ。

■2009年11月15日(日)21:15  青猫横町26
 うみのさんは寝ているはたけさんを、自分も痛いような顔で見つめた。お医者さんは首を傾げながらうみのさんに尋ねた。
「病院へ行くと?」
 うみのさんは口を開いて、少しだけ迷ってから言った。目はずっとはたけさんの事を見ている。
「ただの検査だと本人は言っているんですが、なんらかの治療の副作用ではないかと−−−」
 お医者さんは卓袱台の上に置いた薬の袋を手にとって眺めた。
「これは一般には鎮痛剤として扱われているが、正確には脳の受容体に作用して血管を収縮させる薬だ。眼球の裏側の動脈を選択的に収縮させる」
「はい」
 うみのさんは頷いた。
「だが、こちらの粉薬は血行を良くするための薬だ。効き目は緩やかで日常的に薬湯で飲むような」
 お医者さんはうみのさんの顔を注意深く見ながら言った。
「薬で代謝をコントロールしているように思える」
「−−−木の葉病院に行った後は、ひどく気が高ぶるようなんです」
 思わずといった風に、お医者さんは寝室の襖に目を向けた。また、うみのさんの顔を見る。
 うみのさんもお医者さんの視線につられたように寝室の襖を見た。わたしもいっしょに寝室の方を見て、うみのさんの顔を見た。
 うみのさんは、お医者さんと私の顔を見て、それからはたけさんを見た。
 うみのさんと目が合った。
 ひゅっと、うみのさんは息をのんだ。それからみるみる顔が赤くなった。
「いや、まあまあ。二人とも男盛りだしな」
 お医者さんはそう言ってなだめるように手を振った。
 うみのさんはますます赤くなった。
 オッホン、とお医者さんが咳払いをした。
「わしはしがない町医者でな。中央の病院が何をやっているかまでは分からないが−−−あれが写輪眼か?」
 シャリンガン、とお医者さんは知らない言葉を言った。
「今はもう、ただの目です。視力はほとんどないはずです」
 お医者さんは腕組みをして重たく頷いた。


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病院に行った日の夜は激しいようです。
コメント
  • はじめ(2009/11/15 21:53)
    XPでIE8でもちゃんと表示されてるというご報告がありました。こおもりさんと麻生さんのPCはきっと呪われたPCなんじゃないですか?起動すると「デロデロデロデロ〜」と8bitの音楽が流れたりしませんか?DQのように。
  • こおもり(2009/11/16 01:30)
    んじゃ、私と麻生さんのPCにだけ「はじめさんのBBSがセンタリング表示されちゃう呪い」がかかってるという事で解決だネ☆(^_^) b
  • はじめ(2009/11/16 20:19)
    ☆(^_^) b
  • 麻生(2009/11/16 23:07)
    今更何なんですが……なんか治った☆(^_^)b
  • はじめ(2009/11/17 22:00)
    呪いが解けたんだネ☆(^_^) b

■2009年11月15日(日)01:06  青猫横町25
 はたけさんは白髪なんだと思っていたけれど、お医者さんのぼさぼさの白い髪とはちがった。お医者さんの髪は太さの不揃いな針金みたいにぐねぐねとしているけれど、はたけさんの髪はつやつやしていて太さもそろっている。色もお医者さんの髪はちょっと黄色っぽい。はたけさんの髪は、アオの灰色の縞の白っぽいところみたいな色だ。
 若いのに白髪なんだと思っていたけど、猫の毛並みといっしょで生まれつきこういう色なのだろうか。
 きれいなガーゼではたけさんの額をふくお医者さんの横に座って、わたしはそんな事を考えていた。
 式鳥を飛ばしてから二十分くらいした頃、外の廊下を誰かの足音が近づいてきた。
 足音ははたけさんの家のドアの前で止まって、がちゃがちゃと鍵が鳴ってドアが開いた。
 うみのさんが帰ってきた。
「すみません、あの、」
 うみのさんは肩で息をしながら、靴を脱ぎちらかして大股で部屋へ入ってきた。
 わたしはお腹のそこから空気が抜けるように息をついた。
 よかった。
「あの、」
 うみのさんはわたしとお医者さんの顔を交互に見ながら、なにか言おうとしているのだけど息が整わないでいる。
 お医者さんはうみのさんの顔を見て、左側の襖の向こうの寝室を何度も見た。目がまん丸になっている。
 お医者さんは気を取り直したように、うみのさんに向き合った。
「お邪魔しとりますよ。わしはそこの通りのヤマメ医院の者なんだが」
 式を飛ばしたのは自分だとお医者さんは言った。
「この子が医院まで来て、病人がいるから診てほしいと言うから上がらせてもらいました」
 うみのさんは大きく頷いて、はあ、と息を吐くと、「ありがとうございます」と頭を下げた。
「カカシさんは−−−」
「さっき、痛み止めの注射を打ったから落ち着いてきとる。木の葉病院から処方されたアンプルを使わせてもらった」
「はい、ありがとうございます」
 うみのさんはもう一度、頭を下げた。
「まあ、落ち着いて。座ったらどうかね」
「はい」
 うみのさんはお医者さんと向き合って正座した。
「よくこういう事はあるのかね?嘔吐や気を失うほどの痛みの発作が」
 うみのさんはぎゅっと顔を顰めて、ほんの少し斜め下へ目を向けた。
「月に一度ほど」
「木の葉病院から出されている薬を見るかぎり、偏頭痛か群発性頭痛のようだな。即効性がある薬だから十五分もすれば効いてくる。もう大丈夫でしょう」
「あの、」
 うみのさんは迷いながら口を開いた。
「月に一度、木の葉病院へ行くと発作が起こるようなんです」


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ノドカはわりとひどい事を考えています。
コメント
  • はじめ(2009/11/15 01:10)
    IE8でVistaで正常に閲覧出来ますという報告がありました。VistaでないとIE8の真価は発揮されないのかも。

■2009年11月10日(火)20:59  青猫横町24
「いっしょに住んでいるのは君だけか?」
 お医者さんにたずねられて、わたしは首を横に振った。
 わたしははたけさんと一緒に住んではいないし、ここにはうみのさんも住んでいる。
「家の人はどこにいるんだね?」
 うみのさんは仕事に行っている。
 お医者さんは少し考えてから、鞄から小さくたたんだ白い紙を取り出した。
 広げると鳥みたいな形をしていた。不思議な文字のような模様のようなものが墨で書かれていた。お医者さんはその紙に、一緒に鞄から出した短い鉛筆でなにか書き付けると、元通りたたんだ。
「家の人に連絡を取るから、どこにいるか教えてくれるかね?」
 わたしはちょっと考えた。うみのさんは忍者アカデミーの先生だから、きっとアカデミーにいると思う。
 にんじゃあかでみーにいます。
 わたしが口を動かすと、お医者さんは頷いて、たたんだ紙を窓から外へ放り投げた。
 空に向かって投げあげられた紙は、そのまま落ちてきそうになって、でも落ちる前に、羽を広げて空をすべって飛んでいった。
 わたしはぽかん、とそれを見上げた。
 忍者の人が使う式鳥だ。
 このお医者さんも忍者なんだ。
 わたしがお医者さんの顔をびっくりして見つめていると、お医者さんは不思議そうな顔をした。
「君だって忍者の家の子供だろうに。そんなに珍しかったかね?」
 わたしは答えずに、縁台に出て式鳥の飛んでいった方角を眺めた。あっちに忍者アカデミーがあるんだ。
 しばらく並んだ屋根の向こうを見ていたけれど、もう式鳥も見えなくなってしまったので、部屋に戻った。足下にさっき、わたしがはたけさんに渡した氷水の入ったビニール袋が落ちていた。氷はもう溶けて小さくなっていた。
「頭部は冷やした方がいい。水枕はないかな?」
 お医者さんが言った。わたしははたけさんの家のどこに水まくらがあるか分からない。わたしの家では洗面台の下に氷まくらが入っているけれど。
 わたしは庭に向いた窓から外に出て、自分の家に戻ることにした。
 わたしが縁台から飛び降りて、垣根を潜っていくと、お医者さんはびっくりして「どこへ行くんだ?」と叫んだ。わたしは答えずに自分の家に入った。
 洗面所の下の棚からだいだい色のゴムのまくらと、口をとめる金具を引っ張り出して、また垣根を潜ってはたけさんの家に戻った。
「お隣さんから黙って借りてきたのか!?」
 お医者さんはまだびっくりしたままだ。
 わたしは首を振った。
 これは、うちの。
 わたしのうちの。
 説明したけど、お医者さんはまだ首を傾げていた。
 わたしは水まくらを持って、はたけさんの家の台所に行った。冷蔵庫の上の扉を背伸びして開けた。氷のお皿を取ろうとしていたら、お医者さんが取ってくれた。氷をまくらの中にあけて、水を入れると、お医者さんはまくらの口を留め金でぱちんと閉じた。
 洗面所できれいなタオルを巻くと、お医者さんは水まくらを寝ているはたけさんの頭の下に敷いた。


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お医者さんははたけさんをオトンだと思っています。
むろん、帰ってくるのはオカンだと思っています。
コメント
  • 麻生(2009/11/11 23:01)
    あの〜…私もセンタリングに見えるんですが…。何がいけないんだろうか…。
  • こおもり(2009/11/11 23:46)
    IE8はCSSが一部うまく表示されないらしいですね。あと、リンクページのレイアウトが崩れてます
  • はじめ(2009/11/12 22:33)
    私のIEでは崩れてないモン!…いや、もう、よくわからんですたい。この日記も配布してるCGIに手を加えずに使ってるだけだし。よその日記やBBSは正常に閲覧出来てるんですか?リンクページはNinjaという使えねーHPメーカーで作ったページなので崩れる事は大いにあり得ます。でもCSSは使ってないはず。なんだニャン。(壊)
  • こおもり(2009/11/12 23:56)
    IE8はあまりにも固まって不便なので削除してしまいました。7だと崩れてないですね。あ、小説ページは8でも大丈夫でした。
  • はじめ(2009/11/13 22:54)
    それはよかった。しかし、まともにサイトが表示出来ないシロモノをリリースするMSの考えは理解しがたいです。Vistaも重たいばっかりでPCを益々不便にするだけのような話を聞きます。シンプルで軽いので充分なのにね。

■2009年11月08日(日)21:46  青猫横町23
 わたしははたけさんを見下ろして立ち尽くした。こめかみのあたりから、すーっと冷たくなった。
 昔、こんな風になってしまった人がたくさんいた。わたしはそれを覚えている。
 その人達はみんな、どこかへ片づけられてしまって、もうどこにもいないのだ。はたけさんもこのまま動かなかったら、どこかへ片づけられてしまうかもしれない。
 木戸をくぐって、お医者さんがやっと庭に入ってきた。わたしははたけさんから目が離せずに立っていた。
 私の横からお医者さんは縁台に鞄を置いて、はたけさんを見た。
「これはいかんな」
 呟くと、ひょいと縁台に登った。
 倒れているはたけさんの脇に屈んで抱き起こすと、仰向けに寝かせた。まず口元に手を持っていって呼吸を確かめた。仰向けになると小さくだけど、はたけさんの胸が上下しているのがわたしにもわかった。
 動いている。
 とりあえず、ほっとした。
 それからお医者さんは、はたけさんの前髪を掻き上げて、閉じた目蓋を指で押し上げて目の中を覗き込んだ。わたしも一緒に覗き込む。はたけさんの額には汗の粒がびっしりと浮かんでいた。目蓋の間のほとんど白目になっている上の方に灰色がかった黒い目がぎょろりと見えた。
 少し考えて、お医者さんははたけさんの左眼の目蓋も押し上げた。傷がある方。目が開いたのでわたしはびっくりした。
 目蓋の下は塗りつぶしたように真っ黒だった。目がないのかと思ったけど、ちゃんと目の玉は入ってるみたいだった。濡れた真っ黒なガラス玉をはめ込んだみたいだった。真っ白い顔に、真っ黒な目玉のお化けみたい。無理に開かされた目からたらりと涙が流れた。痛いような、怖いような気持ちがしてどきどきした。
「はたけ…あの、はたけか?」
 お医者さんは小さく唸って、はたけさんの目蓋から手を放した。
「体が冷えてる。布団に寝かせよう」
 そう言ったけど、お医者さんは自分より背の高いはたけさんを持ち上げる事ができなかった。わたしにも無理だ。
 仕方がないから、部屋の中の座布団を集めて布団代わりに敷くと、その上にはたけさんを寝かせた。わたしはお医者さんと一緒に、さっき入った寝室に行って毛布を持ってきて、はたけさんにかけた。
「よく、こんな事はあるのかね?」
 お医者さんにきかれて、わたしは首を傾げた。
 あたまが、いたくなる。りんごじゅーすをのむ。
 昨日からのはたけさんの様子をわたしは説明した。
 どこかに、くすりが、ある。
 口をぱくぱくして伝えると、お医者さんは立ち上がって、部屋の中をきょろきょろと見回した。わたしも一緒にあちこちの引き出しをもう一度、開けてみた。
 寝室でお医者さんがベッドの脇の引き出しからくしゃくしゃの薬の袋と注射器を見つけた。袋の中には粉薬の袋と、細長いガラス瓶みたいなものが何本か入っていた。
「痛み止めか」
 細長いガラス瓶に書かれた文字を読んで、お医者さんが言った。
「こっちは血行を良くする薬だ」
 お医者さんは注射器と薬の袋を持ってはたけさんの所まで行くと、鞄から銀色のまるいケースを取り出した。中には濡れた脱脂綿が詰まっていて、消毒薬のにおいが、つん、とした。お医者さんは脱脂綿ではたけさんの腕を消毒して、それから細長いガラス瓶を、細くくびれたところから折って、中の薬を注射器で吸い取った。針の先を上に向けて、じっと見ながら注射器の空気を抜くと、お医者さんははたけさんの腕をとった。
 半袖のTシャツからのびたはたけさんの白い腕に、注射の針が刺さるのをわたしは自分が痛いような気持ちで見ていた。
「しばらく様子をみよう」
 お医者さんはそう言って、はたけさんの腕を布団の中にしまった。


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いつもはきっと自分で注射を打っているだろうところを想像して。
あるいはイルカ先生が打ってあげてるところを妄想して悶えるわけですよ。
フッ。

■2009年11月08日(日)00:24  久しぶりに
青猫です↓
なんも更新ないのに拍手して下さったり、コメント送って下さる方々、ありがとうございます。うっ。涙が…。
体の方は、結局、一日会社休んで、今日も一日寝て元気になりました。
あああ、有給は入稿のためにとっておかなくてはならないのに…!
ご心配下さった方、ありがとうございますー。
また、ぼっちぼっち更新していきます。

ところで、なんか、トップページのレイアウトが崩れてる。
何も弄ってないはずなのに。おかしいな。
丁度、濃い色の所に白文字が載るようにしてたのに、一文字分ズレてる。なんでや。
そろそろトップページも変えるかな。
コメント
  • こおもり(2009/11/09 20:01)
    IEを最新版にしたら、このBBSの文章全てがセンタリングで表示されるのですが。うちだけかな。
  • はじめ(2009/11/09 23:42)
    えーーーーーーーーーーー…IEはいらんことばっかするので、更新しないに限りますよ。グンニャリ。

■2009年11月08日(日)00:20  青猫横町22
 玄関のドアの周りには色硝子がはめ込まれていて、古いけれどきれいな家だった。こんな古い家は今の木の葉では珍しい。ドアを開けて中へはいると、板張りの床に黒い皮の長椅子が並んでいた。
 奥へ続く廊下の手前にある受付には誰もいない。
 薄暗い廊下を進んでいくと、つきあたりに階段があって踊り場の窓から明るい光がさしていた。
 廊下の左側にドアがひとつ、あった。
 ドアは開いていた。のぞき込むと大きな木の机が窓際に置かれていて、白いカーテンで仕切られた部屋の奥には白いシーツを敷いただけのベッドがあった。
 中を見回してみたけど、だれもいない。
 ごめんください、と言おうとしたのだけど、やっぱりわたしの口からは声が出なかった。
 開いた口の奥で、喉の中でわたしの声は溜まり込んで出てこない。
 わたしは開きかけているドアを叩いた。
 トントン。
 もう一度。
 トントントントン。
「はいはい。聞こえておるよ」
 しわがれた声がして、部屋の奥のベッドの脇のドアから白衣を着たおじいさんが現れた。
 ぼさぼさの白髪頭で眼鏡をかけている。
 聴診器を首にかけているからお医者さんだとわかった。
 知らない大人の人を前にして、わたしはすごく緊張してしまったのだけれど、とにかくはたけさんを診てもらわないといけないと思って、それを伝えようとした。
 じゅうびょうにん。いえにきてください。
 わたしはぱくぱくと口を動かした。
 お医者のおじいさんは「ん?」と首を傾げて、わたしの方へ身を屈めた。
 じゅうびょうにん。はたけさんをみてください。
 繰り返して口を動かした。声が出ないのがもどかしい。わたしはなんども繰り返して、口を動かした。
「もっと、ゆっくりしゃべってくれんか」
 お医者さんは眼鏡をずらして目を凝らすような仕草をした。
 わたしはゆっくりと、一言ずつ区切って口を動かした。
「じゅう、びょう、にん。はたけ、さん、の、家、に、来て、ください」
 お医者さんは、ようやくわたしの口の動きを読んでくれた。
「病人がいるのか」
 うん、うん、とわたしは頷いた。
「今、用意しよう」
 お医者さんは机の下から黒い大きな鞄を引っ張り出して、肩に掛かった聴診器を仕舞い込んだ。それから机の引き出しから、いろんな道具を鞄の中に移した。
 わたしはドアの外へ出てから中を覗き込んだ。お医者さんが鞄を持って歩いてきたので、先に走り出すと、「待ちなさい。そんなに走らないで−−−」くれんかのぉぉ、と間延びした声が後に聞こえる。玄関のドアを飛び出して、後ろを振り返って少し待った。お医者さんは鞄を抱えて、ゆっくり靴を履いて、えっちらおっちら歩いてくる。
 お医者さんがついてくるのを確かめながら、わたしは商店街を走って、路地を曲がった。路地の入り口でまた少し待った。お医者さんが追いつくと、また走って、わたしの住んでいるアパートの塀の所まで行った。板塀の端っこの板戸を開けると、もう振り返らないでまっすぐはたけさんのいる縁台へ駆け寄った。
 はたけさんは水色のタオルケットから抜け出して、縁台の縁から落ちかかったように倒れていた。頭がぐったりと地面に向けて垂れている。近づくと、つん、と酸っぱいような臭いがした。
 縁台の下、地面の土にはたけさんの吐いたものが広がって浸みていた。
 はたけさんはぐったりとして、動かない。


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はたけさーーん!

■2009年11月04日(水)22:03  冬コミ
受かりました。
受かりましたと言うより、当たりました。
コミケ運だけは妙にいいよな、と言われます。
きっと、数年前に信じられない不備で落選したのが効いてるんだと思う。
いや、なんか、コミケの神様に。呆れすぎて、つい当たり引いちゃうみたいな。
ああああああ、ガンバロー。
ガイ先生とサスケ様の熱い科白を読み返して頑張るぜ!
スペースはこちら。

ミ−32a

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