■2011年02月12日(土)01:02
青猫横町37
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暑くなり始めると、はたけさんの庭の野菜はどんどん育った。するんと垂れ下がった細長いきゅうりや、黒く光ってるナス、背の高いトウモロコシの実からも白い毛がふさふさとはみ出してきて、そういえばはたけさんに似ている。 トマトは毎日、両手で抱えるほど採れる。 最初は生で食べていたけど、だんだん食べきれなくなってはたけさんはスパゲティに入れたり、鰯と一緒に煮たりした。 それでも食べきれなくて、「ノドカ、家に持っていく?」と訊いたけど、わたしははたけさんの家に来ている事はお母さんに秘密にしているからもらえない。それに、お昼にはたけさんと一緒に食べているから、もう、お腹の中がトマトで一杯だ。 縁側に今日の朝、収穫した野菜を並べてはたけさんは胡座をかいて腕組みをしていたけれど、「ついに計画を実行に移す時がきたようだな」と独り言をぼそぼそと言って、立ち上がると部屋の中へ入っていった。 台所の方でしゃがんでガタガタと戸棚をあさっている足とお尻が見える。身を乗り出して窓から覗いていると、はたけさんはかごやプラスチックのボールを重ねて持ってきた。 それから段ボール箱を押し入れから出してきて、野菜とかごやボールを中に入れた。 「あと、何だ?」 はたけさんは頭を傾げて少し考えた。 それから、また台所へ入っていって流しの下の戸棚からスーパーの白い袋をたくさん持ってきた。それも段ボール箱に入れる。 「こんなもんかな」 はたけさんは段ボール箱を覗いて、ひとつ頷くと「ノドカ」と呼んだ。 「帽子被っておいで」 わたしははたけさんの顔を見上げて、すぐに自分の家に戻って箪笥の上から麦わら帽子をとってはたけさんの家に戻った。 はたけさんは白いTシャツの上に青いシャツを羽織って、丸いカンカン帽を被って、黒いサングラスをかけて庭に立っていた。青いシャツには黄色とオレンジと銀色の葉っぱと胸に緑色のオウムの絵がついていてテラテラしてなんだかすごく派手だ。テレビのドラマに出てくるやくざの人みたいだ。 黄色いビーチサンダルを引っ掛けたはたけさんは、縁台から野菜の入った段ボール箱を小脇に抱えると「よし、いこう」と低い声できっぱり言って、庭の木戸へ向かって歩き出した。
--------------------------------------------- 真冬日に真夏の話を書いている。 前回の青猫のログを探したら何ヶ月も前だった。 更新全くなくてごめんなさい。
昨夜、チャットで遊んで下さった皆様、ありがとうございました。 久しぶりにカカイル語りして楽しかったです。
拍手コメントのM様> 拍手ありがとうございました! 更新停止はしていませんから大丈夫ですよ〜。 コメントとか頂けるとやる気が出ます。 甲斐性がないサイトマスターなのでのんびりおつき合い下さい。 | | |