男はナルトよりも頭ひとつほど背が高かった。無造作な黒い髪に削げた頬、ぎらついた双眸が目の前に飛び出してきたナルトを捉えた。
 ピリ、とナルトの首筋の毛が逆立つ。
 今ではよく知った手練の忍が持つ気だ。
「昨日のガキか」
 男の低い声が言った。
 物陰から見ていたことを気づかれていた、ナルトは油断なく男の目を見据え唸るように言った。
「何しに来た」
「ここは任務受付所だろう?」
 掠れたようなハスキーな声が揶揄するように響く。
「あっちへ並べよ」
 視線は逸らさぬままナルトが顎をしゃくると男は受付へちらと視線を投げて
「俺の勝手だろう」
不遜に言い放った。
「おまえっ…」
 ナルトが声を荒げようとした時、後ろからぐいと肩を掴まれた。
「すみません。こいつ、まだ中忍になったばかりで目上の者に対する行儀がなってないんです」
 ナルトを脇へ押しやって、いつの間に机の向こうから出てきたか、イルカが男へ頭を下げた。
「な、イ、イルカ先生っ…」
「おまえも謝れ」
 有無を言わさずイルカの顔は厳しい。
「こんな場所で上忍の方に突っかかるとは何事だ」
 イルカに言われて初めてナルトは受付所にいた人々が皆、自分を注視しているのに気づいた。
 だからなんだ、好奇の目に晒されるのには慣れている。
 ぐいと頭を押さえつけるイルカの手をナルトは猛然と振り払った。
「俺は謝るような事してない!謝るのはそいつだろう!そいつがイルカ先生に---------」
「ナルト!」
 ごいん、と鈍い音がした。
 久々に食らったイルカの拳骨は強烈だった。
「いったー…」
 目の前に星が飛んでナルトはその場にしゃがみこんだ。
「こちらへどうぞ」
 イルカが男を受付机の方へ連れてゆくのをナルトは涙目で見上げた。
 クッと小さな笑い声を男が漏らしたのをナルトは聞き逃さなかった。





「イルカ先生に受付辞めさせてくれってばよ!!」
 重厚な木の扉を開け放ってナルトは怒鳴った。
「なんだい?暗部に入れろって駄々こねるのはやめたのかい?」
 五代目火影は執務室の大きな机の向こうからにやにや笑って、頬杖を突いたままナルトを迎えた。五代目火影である綱手はもう六十近いはずだがいまだにナルトと出会った頃と変わらない若々しい外見のままだ。机の上に重たげな乳房がのっている。傍らに控えた書記官は目のやり場に困るらしくあらぬ方へ視線を向けていた。
「う、それはまた今度の話だってば…」
 五代目に会うたびナルトが、なんで同期のサスケだけエリートコースである暗部へ配属されたのか、自分も暗部に入れろと言い張るのがいつもの事だ。
「報告に来たヤマネがあんなドタバタ忍者、とても暗部には向きませんって言ってたよ」
「だ、誰がドタバタ忍者だってば!」
 ヤマネは昨日まで共に任務にあたっていた小隊の隊長だ。
 任務の内容は火の国の大名が組織した各地への視察団に付き従っての護衛というものだった。半ば公務に近い任務だったため、ナルトや他の隊員とは別に部隊を率いた彼は直接火影に報告をしに来たようだ。
「まあ、依頼主はおまえを気に入ったみたいだったけどねえ」
「ゴトクさんが…?」
 綱手はにっと笑った。目の前の少年はいつの間にか背が伸び、支給のベストも様になるような顔つきになった。三週間前よりも大人びて見えるのは気のせいではないだろう。
 少年が日々成長してゆくのはまるで失った弟が大きくなってゆくようで、またかつて愛した男の面影が還ってくるようで綱手の胸に温かいものが灯る。
「相変わらずジジババには好かれる子だよ」
 ジジババって、人のこと言えるのかと内心ツッコンだナルトだが、綱手の次の科白にここへ来た用件を思い出した。
「で、イルカがどうしたい?」
「そうだってば、イルカ先生に受付の仕事辞めさせて欲しいんだってば!」
「はあ?」
「あんなとこにイルカ先生を座らせるなんてもう、絶対ダメだって!」
「何かトラブルでもあったのかい?こっちにはなんの報告も入ってきてないけどねえ」
 手元のファイルを繰りながら綱手が眉を顰めた。
「イルカ先生、セクハラされてるんだってば!」
「は?」
 ガクッと綱手の肘が机の上で滑った。
「受付に来る上忍がイルカ先生に付きまとってるんだってば。なんか、スゲー感じ悪い奴!」
 あのな…、綱手が低い声を出す。
「一般人の小娘でもあるまいし、忍がそんな事でグダグダゆってんじゃないよ!」
「里の皆を守るのが火影の仕事だろう!!」
「だから受付には若い女や美形は一人もいないだろう。そういうことはちゃんと考えて配属されてるんだよ。イルカは人あしらいが巧いからね。おまえが心配する事じゃない」
 何気にイルカに対して失礼な事を言っている綱手だがナルトはそんな事には気がつかない。なんとしてもあんな場所からイルカを引き離さなくてはならないと思うのだ。
「でもイルカ先生が…大体、イルカ先生はアカデミーの先生なのになんで受付係までやってるんだってば。人手不足っていったって専門の書記官もいるし、受付なんてもっと若い忍のやることだってみんなゆってるってばよ!」
 確かにイルカもアカデミーでの教務暦が長くなるにしたがって責任の重い立場になりつつある。だが人当たりがよく、人との繋がりを大切にするイルカは依頼主達からの覚えもいいし、教師だけあって依頼を請け負う忍達の特性や性格もよく把握している。今、受付所勤務から抜けられるのも痛いのだ。
 更に、
「受付係なんて外へ任務に出る連中は馬鹿にしてるみたいだけどね、あれでなかなか難しい仕事なんだよ。依頼主や癖の強い忍達とのパイプ役を務めるんだ。それなりに信頼できる人間性の奴にしか出来ない事だ。それにね、なんていってもイルカは経済的なんだ」
「は?」
「あの子にコーディネイトさせれば5%から7%、年間のコストを削減できるんだよ」
 依頼主の懐具合から引き出せる依頼料を見切り、的確な人材活用で経費を削減する。
 その手腕は侮りがたいものがある。
「だからイルカを受付所勤務からははずせない。分かったかい?」
 ナルトは口を引き結んで俯いた。はっきり言ってナルトは算数がダメだった。経費だの純益だの、そんな話もまったくダメだ。ダメだけどイルカの仕事が受付でにこにこしてるだけじゃないことは分かった。
「でも、俺はイルカ先生があんな奴らにあんな扱いを受けるのは我慢できねーってば」
 俯いたまま搾り出すように言うナルトに、やっぱりまだまだ子供だねえ、と綱手は肩を竦め慈しむような目を向けた。
「おまえさんの気持ちも分からないではないけど、イルカは立派な中忍だ。そういうのも込みで仕事だって分かってるさ」
 それに、
「誰が誰を口説こうが自由なんだよ。」

あんたは○ー娘。か阪○タイ○ースか。
イルカ先生の経済効果は果たして如何程のものなのか。
知っているのは木の葉の上層部だけなのです。
あまりにも文章が雑で、なんじゃこりゃ、ト書きかい!と
立て直そうとしてみましたがムダでした。(駄)