「何言ってんの?」
カカシが低く言った。
「お、俺のことを好きじゃない奴が俺に触るな…!!」
苦しい息の下で吐き捨ててイルカは布団の上掛けを噛んだ。フー、フーッと毛を逆立てるイルカに無遠慮にカカシの手が触れてきた。器用に片手でズボンのバックルを外し、ジッパーを下ろす。
「やめろっつってんだろ!!」
「好きならいいんでしょ?」
無表情な声が言い、無造作にズボンを下ろされた。剥かれた尻の狭間に指が差し込まれる。ひっ、と息を詰めたイルカに構わず奥まった部分を確認するように指が動く。
入り口を揉み込むようにされるが固く締まった襞はカカシの指を受け入れない。
「固い」
ぽつんと言葉が降ってくる。背中から手が離れた。
「このっ…」
イルカは身を起こそうとしたが両手が拘束されている上に、大きく足を開かされてベッドとカカシの体に挟まれて思うように動けない。更に人体の急所を押さえられているのだから下手に動くと自分の首を絞めることになる。歯噛みしながらも腕を曲げて胸の下で肘をつくのがやっとだ。
「うーん、とりあええず体に訊こうか?」
急に余裕を取り戻した口調でカカシが言い、ごそごそと何かを探る音がした。もう分かる。あれは腰に携帯したポーチを探っているのだ。
カカシの指が一旦、離れてそこにべとりとしたものが塗りつけられた。冷たい感触に身が竦む。油脂の匂いが鼻を掠める。イルカも持っている、傷薬の匂いだ。消毒殺菌と血行を良くする効果がある。じくりと疼く感覚があり、イルカの体温で薬が溶けて狭間を伝った。それを掬い上げるようにカカシの指が押し当てられた。
「あ、」
つぷっと指が入った。
「あ、あ、あ、」
ゆっくりと根本まで押し込まれてイルカの背が反る。中を擦るように指を回転させられる。イルカは体を強ばらせて耐えた。腹の側を擦りながら指が引き抜かれる。ある部分を指が通過した時、目の前が真っ赤になった。びくり、と震えたイルカの反応を確認するように再び指が挿入された。何度もそこを擦り上げられてイルカの腰ががくがくと揺れる。
「…っや、め」
強すぎる刺激から逃れようとイルカの体がベッドに乗り上げる。握りしめた両手に額を押し当ててイルカは食いしばった歯の間から声を漏らした。そこを刺激されれば男は誰でもおかしくなる。カーッと頭に血が上がって何も考えられなくなる。入れられた場所にもう一本指が増やされる。薬の滑りをかりて指はなめらかにイルカの中を蹂躙した。
カカシのもう一方の手が体の下に差し込まれて、乳首を摘んだ。既に固くなっていたそこをこりこりと弄られる。ぶるっと腰が震えた。下腹部に熱が集まって、もう立ち上がっているのが自分でも分かる。
イルカを十分に高ぶらせて、カカシはイルカの耳に質問を吹き込んだ。
「俺がガイを好きだってどういうこと?」
「アスマ先生が…っ」
「アスマ?」
カカシの声が訝しげに尋ね返す。
「あなたが言ったんじゃないか」
「何を?」
イルカは口を噤んで首を振った。
「言って」
容赦なくカカシの指が胸の飾りを押しつぶして答えを催促する。痛痒い刺激にイルカは身を捩った。
「他に…本命がいるって…」
ひっ、と喉が詰まる。カカシは非道い。こんな事をしながらこんな事を言わせるカカシは非道い。
「そんなこと言いませんよ?」
その上、しらっと言う。カカシは非道い。だのに好きだと思っている自分は本当に馬鹿だ。馬鹿だからこんなに胸が痛い。この人は俺のものにはなってくれないのに。
「言って…たっ!誕生日、約束してるって…」
頬を布団に擦りつけてイルカは叫んだ。
「だから俺には会えないって言った…!」
ぶわっと涙がこみあげて、もう堪えられないと思った。意地も強がりも、もうぐしゃぐしゃだ。もう、泣く。
だがそう思った途端、カカシがふぅーーー、と息を吐いてぱたりと背中に倒れてきた。