本部の門を出ると「ホアチャー!」とガイがドロップキックの体勢で真横から飛んできた。
この距離を飛んできて当たるか。
カカシはひょいと身を屈めて避けた。
一度、飛んでいったガイが更に反対側から木ノ葉旋風で飛んできた。
「だから、その距離だったら当たらないっての」
上段下段と振り分けられる蹴りを片手でブロックしてカカシは胸のホルスターから巻物を取り出した。そのまま、すぱーん、とガイの頭を叩く。
「あいた、」
蹌踉けたガイが、がばっと体勢を立て直し、
「さすが我がライバル、はたけカカシだ!だが、今の俺は真実の力の20%しか出していないぞ!」
そう言って足に履いた鉄底のサンダルをカカシの目の前に掲げて見せた。
「俺は今日のバースデイファイトのために密かに特訓を積んでいたのだ!さあ、今こそパワーアップした俺の実力を…あいた、」
バースデイファイト?なにそれ?
カカシは最後まで言わせずにガイの頭を巻物でぽこぽこ叩いた。
「あいた、あいた、ちょっと待て、カカシ、今、鉄底を外すから…」
「おまえねー、人の任務妨害しておいて他に言うことはないわけ?」
カカシの恨み言にガイはガハハと笑った。
「いや!あの時はすまん!まさか、あそこにお前達がいるなんて思わなくてな!」
パン、と両手を合わせて悪びれもせずに謝る。
カカシはそんなガイを更に巻物で叩いた。こいつがあの塔で合同任務中の草隠れの中忍五人をボコしたおかげで予定が狂いまくったのだ。
騒ぎを聞きつけて螺旋階段から一階の踊り場を見下ろした時、ガイと一緒にあの人が戦っているのを見て心臓が止まるかと思った。一階を警護していたのは中忍だが、姫君の泊まっている部屋のある七階には、魑魅魍魎のたぐいのような草隠れ屈指の上忍や、滝夜叉御前と呼ばれる滝隠れ最強のくのいちやらがいた。七階に降りれば確実に殺される。そう思って、咄嗟に吹き抜けを昇ってきたイルカの手を掴んだ。
放り上げた時に見た、驚いた顔が最後にみたイルカの顔だ。
まあ、ガイがいたおかげで彼らを逃がすことが出来たのだからその事には感謝しよう。交戦することになったら他里の者達に木の葉は裏切っていないと証明するために真っ先に殺し合わなくてはならなかった。
たとえ演技でもあの人に刃を向けるなんてぞっとするというのに。
「気をつけてよね」
気が済むまでガイを叩いて、カカシは言った。
「う、うむ」
ガイは叩かれて低くなった姿勢で殊勝に頷いた。
「ま、火影様が何も言ってないからいいんだけどね」
草も滝もあれは単なる事故として納得してくれたらしい。何のお咎めも受けずに済んだ。
「待て、まだ勝負はついていないぞ!」
怒鳴るガイを置いてカカシはさっさと自宅へ急いだ。
勝手に人をライバル認定して、そのくせ話も聞きやしない。俺のことなんだと思っているんだろう。バースデイファイトってなんだ?ガイの脳みそがゾウリムシみたいなところがカカシは時々、不満だ。イイ奴なんだけどさ。
俺って友達いないよねー。