今はどうだろう。
腕を縛り上げ、上着を剥ぎ取られた肌を震わせているイルカは自分を許すだろうか。
残念ながら、そんな気はしなかった。
「どうしたら、あなたは俺のものになってくれるのかなあ」
途方に暮れた声が自分の口から漏れるのをカカシは聞いた。
そもそもどうしてイルカが急にカカシを嫌になったのか分からない。宥め賺しても「いやだ、いやだ」と首を振るばかりだ。イルカの頑なな態度にカカシは悲しくなった。
強引にイルカの中に居座った自覚はあった。離れている間に我に返って、嫌になったのだろうか。他に好きな相手が出来たのだろうか。
本当はイルカはどこかの気だての良さそうな女と結婚して子供を持つのが似合いな男だ。周囲も皆、そう思っている。今回の任務だって、途中でガイが来たとしても立派に部隊長として振る舞っていただろう。
やっぱりガイか。ガイと何かあったのか、先ほどからやたらイルカは気に掛けている。
「ガイの真っ当さに気持ちが揺れましたか?」
カカシは疑問をそのまま声にした。と、突然イルカが憤然と怒鳴った。
「それはあんたの方だろうが!」
カカシの言葉がイルカの中の何かに触れたらしい。嗚咽を漏らして布団に突っ伏してイルカはくぐもった声をあげた。
カカシはガイのことが好きなんだろう、とかイルカのことを玩具にしているとか、馬鹿とかサドとか二股とか、よく分からないことを喚いてイルカはフーッと唸った。
「お、俺のことを好きじゃない奴が俺に触るな…!!」
先ほどの頑なな態度よりは怒っている方がいい。ちゃんと不満を吐き出してくれれば対処のしようもある。カカシは少し冷静になった。
好きだったら触れても良いということだろう。だったらそれは、イルカもカカシを憎からず思っているという事じゃないか。
イルカはカカシを許す。
その確信を得て、カカシはイルカに触れた。別れる、いやだと言うくせにイルカははっきりとした理由を口にしようとはしない。それをイルカの口から聞くまではカカシも引けないと思った。
十日ぶりの愛撫に簡単にイルカの体は墜ちてきた。
そしてカカシはイルカから引き出した答えに、ぱたりと倒れてしまった。