状況3



「えーーー。またDランク任務か、コレ」
 受付所で不満げな声が上がる。
「エビス先生、もうちょっとやり甲斐のある任務を貰ってくれよ、コレ」
 エビス斑の木の葉丸が依頼書の内容にケチをつけている。
「また迷い猫探しぃ」
 モエギとウドンも頬を膨らませている。
「Dランクでも立派な任務ですぞ。どんな小さな任務でも一つ一つを確実にこなしていくことが実力を育てるんです」
 班長のエビスが黒眼鏡を人差し指で押し上げながら言い聞かせるが、子供達は納得がいかないようだ。
「せめて犬にしてくれよ、コレ」
「この間も猫探ししたばっかりよ」
 なんでそんなに迷い猫が多いんだろうと三人は首を傾げている。
「そりゃー、恋の季節だからねえ」
 頭上から響いた声に三人が見上げると、銀の髪の上忍がひょろりと立っていた。
「あ、ナルト兄ちゃんだ、コレ」
 上忍、はたけカカシの後ろには木の葉丸が慕ううずまきナルトと、その班員であるサクラとサイが一緒にいた。彼らも任務を受けに来たらしい。
「こらあ、木の葉丸。任務を選り好みしちゃダメだってばよ」
 ナルトがお兄さんぶって言った言葉に、「あんたが言うか」「キミにだけは言われたくないだろうね」とサクラとサイが小声でツッコンだ。
 案の定、言ったそばからナルトは、カカシが受付所の列に並ぶと、その背中に向かって両手を合わせて、「Aランク任務。Aランク任務。Aランク任務…」と唱え始めた。
「はい、Dランク任務」
 カカシが依頼書を持って振り返り、にこりと言った。
「ええ〜〜、ありえねーってばよ!」
「ナルト兄ちゃん、俺と同じだってば、コレ」
 木の葉丸に笑われて、むくれたナルトはカカシに食い下がる。
「カカシせんせー。せめてBとかCランク任務ないの?」
「自分でさっき、任務を選り好みするなと言ったばかりだろうが」
 カカシの言葉に「そうよ」とサクラの低い声が言った。
「…あんたは舌の根も乾かぬうちに」
「だって俺、もっとすんごい任務ばんばんこなして、火影にならなきゃなんないのに〜!」
 大袈裟に頭を抱えたナルトに、サクラが額に青筋をたてる。
「仕方ないよ。僕達の班は下忍との混成チームだからね」
 サイがいつもの能面顔で言った。
「ちょっと、待て!俺のせいみたいな言い方すんな!」
「キミのせいじゃないか。僕やサクラさんだけならBランクやCランクの任務を任せてもらえる」
 自明の理とばかりのサイの言い様に、ナルトがむっかーーっとサイの人形のような顔を睨みつける。
 その頭をぽかりと殴りつけて、サクラがナルトの首根っこを摘んだ。
「もう!いちいちサイに突っかかるのやめなさいよ」
 ちゃっちゃと任務片づけて帰るわよ!と宣言してサクラはナルトを引っ張って受付所を後にする。その後にサイが続き、カカシは「お騒がせしましたー」と頭を下げて受付所を出て行った。




七班の日常。