落ちた中忍に駆け寄ったイルカが平謝りに謝っている。流石に中忍だけあって、彼はきれいに着地した。怪我はないようだが、肝を冷やした事だろう。
幸い、ヤマトの行動を見咎めた者はいなかった。
イルカは真っ赤に沸騰した薬缶みたいになって戻ってきた。
「妙なふざけ方せんでください!」
大きな口を開けて怒鳴りつける。ビンッと響くいい声だ。
目の前の男に自分の中の獰猛な部分を刺激される。カカシの大切な花を踏みにじったら、彼はどんな顔をするだろう。
今、自分がまったくの無表情になっている事をヤマトは自覚している。どうやってこの人を奪うか、この人自身からすら奪うかを、冷静にシミュレートしている。黙ったまま怒鳴るイルカを見つめていると、イルカは言葉を詰まらせた。
頃合いだ。
ヤマトはぬっと手を突き出してイルカの腕を掴んだ。
「この人、お借りします」
その場にいた中忍達に声を掛けると、返事を待たずに大股で歩き出した。
「ヤマトさん?」
引っ張られるまま蹌踉けてイルカは後をついてくる。ふりほどけないくらい強く手首を握っている。
日陰に入ると、強い日差しに眩んだ目が一瞬、視力を失う。死のような酩酊感。
裏庭の端の用具室の扉の陰にイルカを押し込んだ。
抗議の声を上げる前に覆い被さって唇を塞ぐ。
ふぐっとイルカがくぐもった声を上げる。開いた口に舌を突っ込んで口腔を深く犯した。首を捩って逃げようとするのを追いかけて壁に押しつけた。つま先立ちになった脚の間に膝を入れて、脚を開かせると股間を揉み込むように手を這わせた。
イルカは目を白黒させている。何が起こっているのかまだ分かっていないようだ。
さっきまで日向で穏やかに話をしていた相手が、どうしてこんな事をするのか理解出来ないに違いない。昼日中のアカデミーの裏庭で、扉の開いたままの用具室で、舞い上がる埃が日の光を受けてキラキラと光るその中で。
奇襲が成功すれば、あとは容易い。
衣服の上からイルカの形を確かめるように握り込み、先端を親指の腹で擦った。
「ん、ふぅっ…んぅ…っ」
ずれた唇からイルカの声が漏れる。かっとイルカは顔を赤く染めた。べろりと唇を舐めて、唾液を飲ませる。咽せて喉を詰まらせたがかまわない。口を塞いだまま性器を刺激し続けると次第にイルカの体が熱を帯び始める。
「ぃあ…だっ」
イルカが拳でヤマトの背中をどんどんと叩いた。したいようにさせてやる。
まだ、カカシが触れていない体。
そう思うと興奮した。
手の中のものが反応を示し、衣服の中でぬるっと滑る感触がした。
「あ………」
イルカが弱々しい声を上げた。
滑りを広げるように擦り上げる。つま先立ったイルカの脚が可哀想なくらい震えている。
「やめ……シさ………んんぅっ!」
呟かれた名前に我になく血が上った。きつく先端を揉み込むと悲鳴のような声が上がった。
一度、このまま出させてやろう。
自分の状態を思い知らせるように、わざとくちゅくちゅと音を立てて扱き立てた。ふぅー、ふぅー、と口を塞がれたままのイルカの鼻から荒い息が漏れる。
間近に熱を感じる。
強引に割り入った舌を抜き出し、そっと啄むようなキスをした。イルカが上気した顔で意外そうに自分を見た。ヤマトは微かに口元を緩め、軽く何度も優しく唇を吸った。
イルカは浅い呼吸を繰り返しながらぎゅっと眉を寄せ、目を伏せて黒い目を揺らめかせた。その姿に美しさを見いだして、ヤマトは驚く。
「やめてください」
掠れた声で、でもはっきりとイルカは言った。
「俺に、こんな事、しないでください。カカシさんのことが、好きなんでしょう」
静かに囁かれた言葉にヤマトは目を見開く。
「え?」
力の抜けた体を、イルカがぐい、と押しやった。
押されるまま、ヤマトは一歩退いた。
床に足裏をつけて、ふう、とイルカは息を吐いた。
「気持ちのぶつけ所を誤らないで下さい」
手の甲で唾液に濡れた口元を拭い、イルカは息を整える。
「どうして−−−?」
「わかります。同じ人を見ていたら」
黒々と濡れた目がヤマトを見た。その潤いに口をつけたいような衝動に駆られる。
「カカシさんがあなたを選んでも、俺は、恨んだりしません」
それから、イルカは大胆に口元を笑ませた。
「譲るつもりは更々ありませんけどね」
眩しくて目眩がする。
この人は花だ。