待ち合わせ場所に現れたいのちゃんは白いレースのキャミソールドレスに青いドレスを重ね着していてすごくおしゃれだった。いのちゃんはスレンダーで脚がきれいだからミニスカートがよく似合う。
私はシンプルな白いワンピースにボレロを着てきたけれど、野暮ったく見えないかなあと心配だ。
いのちゃんはきれいだから隣に並ぶのは気後れする。同じくらい可愛くておしゃれなサクラちゃんならお似合いなのに。でもいのちゃんは「ヒナタ、白似合うね!すっごく可愛い!」と言ってくれた。
「子供っぽくないかな?」
「似合ってるよ!その初々しさが男心にグッとくるのよ!」
いのちゃんは拳を握りしめて言った。
木の葉茶通りで先輩達と合流した。受付や講義で見かける人もいたけど、口をきくのは初めてだ。みんな私達より二、三歳上の人だと思う。
連れて行かれたお店は、ついこの間できたばかりだという飲み屋さんだった。飲み屋さんっていうか、バーっていうのか、クラブっていうのか、私にはよく分からないけどとにかく大人の人が入るようなお店だった。青い照明に凝ったインテリアが置いてあって、奥には玉突き台やスマートボールの台がある。
私は緊張してぽーっとなっていた。
先輩達はみんな優しくしてくれて、一緒にスマートボールをやったりした。そのうち、いのちゃんは男の先輩と一緒にどこかへ行ってしまった。
「あいつ、山中さんが来るって張り切ってたからなあ」って他の先輩が言っていた。
私は一人残されてどうしようって思ったけど、先輩達は親切で私に色々話しかけてくれて、一緒に遊びながらスマートボールのコツを教えてくれたりした。そのうち一人が喉が渇いたと言い出したので、奥のソファに移動して飲み物を頼んだ。
いのちゃんはどこへ行ったんだろうと店内を見回すと、向こうのスタンドで男の先輩と一緒に話していた。
やっぱりいのちゃんて人気あるなあって思った。男の子にも女の子にも好かれててすごい。
でもいのちゃんはサクラちゃんが一番好きなんだろうなと思う。シカマル君とチョウジ君は別にして。
それなのにサクラちゃんはサスケ君の事しか考えていないから、いのちゃんは悔しいんだろう。
またもやもやした事が頭の中を巡りだした。
サクラちゃんの事を考えるともやもやする。
ナルト君もサクラちゃんのことが好きなのに。
悔しい。
この間の中忍試験の時、サクラちゃんはすごく強くなっていた。
私も頑張って強くなったつもりでいたけれど、サクラちゃんには敵わないかもしれない。サクラちゃんは綱手様に弟子入りして医療忍術を身につけて、チャクラコントロールも更に正確になっていた。
私がサクラちゃんに勝つ事が出来る事ってあるのかな。
サクラちゃんみたいにナルト君に好きになってもらう事ができるのかな。
絶望的な気持ちになる。
今のまま地味な努力をしていても無理な気がしてくる。私も綱手様に弟子入りするとか、何か、特別な事をしないと私なんかじゃサクラちゃんには勝てないんじゃないかな。
そう思って焦る。
でも何をしたらいいのか分からなくて、とりあえず目の前にある課題をこなしていくだけで精一杯で、いつになったら壁のない場所になんか出られるんだろう。
ナルト君。
その人の名前は自分を勇気づける呪文だ。
でもその人の事を考えると辛くなる。悔しくなる。
ここにいる先輩達もそんな事を思ったりするんだろうか。どうやってそこから抜け出していくんだろう。みんなきちんと大人の顔になって、ナルト君もきっと大人になって帰ってくるのに。
「ねえ、それアルコールはいってるんじゃないの?」
向かいに座っていた女の先輩が首を傾げて私を覗き込んだ。
「なんだかこの子、さっきからどんどん赤くなってきてるんだけど」
ざわざわと周囲の音が遠のく。
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