ドアノブを握った手に手を重ねて、イルカの背中を胸で押してユニットバスに押し込んだ。洋式の便座の向こうに狭苦しいバズタブがあるだけの狭い空間でカカシはイルカを背中から抱きしめた。
「俺のこと好きって言った?」
「言いました」
俯いたイルカの耳が赤い。
「好きなの?」
「好きです」
悪いですか、と挑戦的に言ってイルカは振り返った。男らしい顎から頤を見せつける。カカシはイルカの唇に食いついた。
「んんむ…む…」
イルカがバスタブにぶつかってバランスを崩した。カカシは身を屈めると、イルカの腰を抱いて持ち上げイルカをバスタブの中に立たせた。自分も風呂の縁を跨いで中に入る。シャワーカーテンをひいてしまえば区切られた狭い空間に二人だけで向き合って立っている。体を密着させてイルカの後ろのシャワーのコックを捻った。まだ冷たい水がノズルから降り注ぐ。
「あ、あんた、さっきから目の色変わってて変ですよ!」
頭から水を被りながらイルカが叫ぶ。お構いなしにカカシはイルカの髪を括った紐を取って自分の手首に巻き付けた。ほどけた髪がシャワーに打たれてしっとりとイルカの頬を覆った。濡れたシャツの上からイルカの体を抱きしめて撫で回した。肌に布地が張りついて体の線がはっきり分かる。そこだけ少し色の濃い小さな胸の突起を布の上から口に含んだ。
「そこはいいですから!!」
「いや、でもなんか放っておけないし。触ってたらここ気持ちよくなるっていいますよ?」
「なりません! ていうか、痛い!」
冷たい水が流れ落ちるせいか、ぴん、と立ち上がった乳首は敏感になっているらしく弄り回されるのが辛いらしい。こんなにやらしいのに。
「もっと普通にして下さい! 普通に!!」
男同士で普通ねえ…。
カカシは硬くなった乳首をひと舐めしてイルカを呻かせてから、バスタブの底に膝をついた。だんだん水は温まって丁度良い温度になってきた。カカシはイルカのジーンズのバックルに手を掛けた。釦をはずして濡れてこわばった生地を下着ごと引き摺り下ろす。
イルカが息を呑む。
カカシは露わになったイルカの性器をうっとりと見つめた。
既に少し立ち始めていた。
嬉しい。
イルカも自分と同じように欲望を表す器官を持っていることが嬉しい。
それが自分に触れられることで興奮を示しているのが嬉しい。
カカシはねっとりとそれに口をつけた。
「う、わ…」
イルカが驚いた声を上げて腰を引く。追いかけてカカシはイルカの腰を抱きかかえるようにして顔を埋めた。
「ちょっと…いきなり…」
引き剥がそうとイルカの手がカカシの頭にかかる。大きな手、ずっと触って欲しかった手だ。いつも伸ばしかけるくせに触れてはくれなかった。乱暴に髪を引っ張るのはちょっと期待していたのとは違うけれど。
カカシは甘い蜜に引き寄せられた動物みたいに夢中でイルカを舐めしゃぶった。舌に擦られて、その刺激に押し出されるように先端からぬるぬると汁が溢れてくる。イルカの意志など関係なしに粘膜が反応して分泌している。
イルカの手がカカシの肩に掛かった。耐えきれずに身を屈めて、カカシの背中に縋るような格好になった。頭上からのシャワーが遮られて、耳元でイルカの苦しそうな息づかいが聞こえる。カカシの口に含まれた性器は無理矢理に育てられて熱を持ち震えている。
カカシの濡れた衣服を握りしめてイルカは達した。
「………あんた、めちゃくちゃだ」
くったりカカシの背に覆い被さったまま、イルカが呟いた。カカシはイルカの腰に抱きついたまま、イルカの出したものを一滴も余さぬよう舐め取った。
喉でも鳴らしそうな顔のカカシの耳を、身を起こしたイルカが引っ張り上げた。
「イタタタ…」
「普通にして下さいっていったでしょう!」
顔を上気させて睨みつけてくるイルカは艶っぽくて、一旦は満足したカカシの心はまたざわついた。胸に顔を埋めると、頤に指をかけられて顔を上げさせられた。
躾のなってない犬を叱りつけるように怖い顔をしている。たまらない。ぞくぞくする。
「お湯が勿体ないです」
言われてカカシはバスタブのゴム栓を蹴っ飛ばして排水溝に入れると、踏んづけてはめ込んだ。二人の体を伝い落ちた湯が少しづつだが溜まり始める。
「イルカ先生の普通ってどんなですか?」
カカシはイルカの胸に顎をあてて見上げ尋ねた。
イルカは両手でカカシの頭をがっしり掴むと唇を重ねてきた。
おおおお、ココナッツクラッシュ!
でも痛くない。むしろ気持ちいい。甘い。口の中のイルカの名残が、二人の唇の間に白濁した糸を引いた。
イルカの手がカカシのズボンのウエストを引き下ろした。
「服着たままなんて…」
口づけの角度を変えながらイルカが囁く。それでも体は離さないで更に密着させる。唇も触れ合わせたまま、ちゅ、ちゅ、と音を立て吸いながらシャツを捲り上げる。カカシも倣ってイルカのシャツを引き上げる。イルカのジーンズのチャックが当たって痛かったので、手と足を使って膝下までずり下ろした。裸の胸と腰がぴったりと合わさると感動的だった。温かい感触に小さな震えが体に走った。
舌を絡めて、互いの口を犯しながら発情期の犬みたいに腰を擦りつけ合った。イルカの尻の肉を掴んで強く押しつけると、「はあ…」とイルカが溜息のように声を漏らした。
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