春野サクラ

#20 オレンジフラワーウォーター

「合コンですか?」本部棟の渡り廊下を歩いているところで声を掛けられた。声を掛けてきたのはさっきまで同じ研修授業を受けていたくのいちの先輩だ。「新しく中忍になった子の顔見せみたいなもんよ。同じ任務に就くこともあるだろうし歳の近い者同士仲良くし…

#9 娘道明寺

「イルカ先生、来ました」声をかけると先生は後姿でモフモフと咳き込んだ。「ああ、サクラ」スチール椅子をくるりと回転させて振り返った片手には小さなピンク色の和菓子が握られている。人を呼び出しておいて何をしているんだ。「これな、大羽先生の差し入れ…

#2 秘伝チョコ

「なんだぁ、おまえら?」玄関を開けたイルカは頓狂な声を上げた。泥だらけの七斑一同が勢揃いしているのだから無理ない。「イルカ先生、カレー作って!」「はぁ?」カレーカレーと連呼するナルトから視線を上げて、カカシへ物問いたげな顔を向ける。「イルカ…

#1 思い出カレー

路肩に停められた荷車の上で七班の下忍三人は口数少なくぼんやりと晴れた空を見上げていた。雲雀がピーチチチと高く高く昇っていく。春の陽は暖かく少し動けば汗ばむほどだ。捲り上げた袖も裾も泥だらけで、サクラは爪の間に詰まった泥を気にしている。班長の…