ヘンゼル
父さんと母さんがこっそり相談しています。もう食べる物がないからあの子達を森へ捨ててしまおうって。私達はドアの陰でその声を聞いていました。お兄ちゃんは泣き出してしまいました。私はお兄ちゃんはどうしてそんなにたくさん涙が出るのかしらと不思議でし…
京極堂小説久遠寺涼子,関口×涼子,関口巽
けだものの恋
一目で惹かれあったに違いない。群をはぐれた獣が初めて同種族の獣に出会ったように。彼らは発情し肉体を交わした。それは恋とは呼ばないのかもしれない。情愛などなかったはずだ。ただ、二言三言、言葉を交わしただけで情の生まれるはずもない。純粋な生殖行…
京極堂小説中禅寺秋彦,久遠寺涼子,京極堂,関口×涼子,関口巽
このささやかな死
「うふふ」「遊びましょう」 少女の手がそっと私の手に触れた。ひんやりと冷たく、しかしひどく生々しい。はじかれるように私は顔を上げた。こめかみを幾筋もの汗が伝い落ちた。汗ばんだ自分の手に重ねられた、白い、柔らかな肉。少女…
京極堂小説久遠寺涼子,京極堂,関口×涼子,関口巽
夢路
懐かしい風の匂いがしていますあの扉から風が入ってくるのでしょう階段の踊り場に黄金色の日差しが差し込んでいます柔らかな光あの扉の外からそこでは空気の澱むことはないのでしょう乾いた風がずっと吹いています&nb…
京極堂小説 文章久遠寺涼子,京極堂,関口×涼子,関口巽