Missing Bird
「なんだ、また留守なのか?」オスカーは器用に片方の眉だけ眇めてみせた。「最近週末はいらっしゃらない事が多いんです」ティムカが申し訳なさそうに言う。「金曜の晩から出掛けてしまうらしくって……」どこに行っているんだ?と訊ねたがティムカは首を横に…
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幸福な結末
「どうぞ」今日最後の一皿をヴィクトールはテーブルに着いたルヴァの前に置いた。最高の出来のパスタソース。まるで今日彼に食べて貰うために作ったような 気がしてヴィクトールはおかしな気分だった。燭台に灯をともすと暗いフロアのこの一角だけが暖かな光…
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完璧な一日
「完璧だ」一口含んでヴィクトールは唸った。エビとムール貝のトマトソース。本日の特別メニュー。「こんな巧いパスタソースは生涯、二度とお目にかかれないかもしれませんね」料理長のゴーシェ元大佐も四角い顎を擦って感嘆した。「閣下、届きましたよ! イ…
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果ての空
澄み渡った青空だった。地平が弧を描き途切れる果てまで続く青。その青の深度のあまりの深さに却って暗さを感じさせるような。無音の世界。一人きりだった。いつからそこにいたのだろう。時の始まりの瞬間から?目に映るのは青の色だけだった。ずっと鳴り続け…
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恋の鳥
本と埃と、どちらかがここの主人であるに違いない。王立図書館の地下書庫では人間 達は彼らの邪魔にならないように極力静かに大人しく振る舞わねばならない。長年馴染 んできたルヴァはともかく、新参者のヴィクトールなどはよく彼らと衝突する。分厚い年鑑…
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月のうさぎ
巨大な洞窟を思わせる薄暗い地下室の板敷きの床にじかに座り込んで、いつものご とく、まったく何時でもどこででもそうなのだ、彼は夢中で本を読んでいた。人の背 丈の倍くらいはありそうな書架に囲まれた一隅、建物の地上に出ている部分に作られ た明り取…
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