NARUTO

#14 街道蕎麦

向こうの席のエロ親父がウザイ。行儀悪く卓に肘を着き、焼き魚をつつきながらカカシは肺の底から空気を吐き出す。とっぷりと暮れた日に火の国の国境近くの宿場で入った飯屋で奥の卓に座った成金臭いオヤジが傍らの、どうやら商売者らしい男をべたべたと触りま…

#12 居酒屋玉子

「玉子焼きかあ」ぼそりと呟いた言葉に、目の前の受付に座った中忍は「え?」と黒い眼を上げて訝しそうな視線をくれた。「ああ、」そうされて口に出して呟いていた事に自分でも気がついた。上忍のくせに我ながら弛んでいる。「ナルトがね、イルカ先生の穴子の…

#11 再びカレー

「どーも」戸口に立った自分を見て、イルカ先生は驚いていた。あれ?もしかして、本当に来るとは思っていなかったのだろうか。場違いな空気を感じてカカシの首が斜めになる。でも来なさいって言ったのはそっちだ。あんな真剣な眼をしたくせに。だからカカシは…

#9 娘道明寺

「イルカ先生、来ました」声をかけると先生は後姿でモフモフと咳き込んだ。「ああ、サクラ」スチール椅子をくるりと回転させて振り返った片手には小さなピンク色の和菓子が握られている。人を呼び出しておいて何をしているんだ。「これな、大羽先生の差し入れ…

#8 居残りキャラメル

目の前に並んだ書類の束やファイルや先生用の本とか教科書とか。高すぎる椅子に足をぶらぶらさせながら机に肘を突いて白いままの紙に目を落とす。はあ。溜息。今日の授業でやったのは呪符の作り方。何も書かれていない和紙にお手本の呪符に書かれたのと同じ文…

#7 中忍レトルト

  乾物屋の店先でイルカは金色の缶詰を手にとって眺めていた。最高級の猫缶、通称・金缶。イルカの胸に一つの疑念がこびりついている。カカシの家のテーブルの上に積んであった猫缶。あの時、ぽぅっと頬を赤らめて視線を逸らしたカカシの珍しい様…

#4 雪玉ラーメン

校庭で一人の子供が雪玉を投げている。ぱしゃり、ぱしゃりと教室の窓ガラスに雪の玉が投げつけられて、砕けては張り付いて滑り落ちる。分厚い雪雲は遠くの山の上から里の空全体を覆いつくして外はもう真っ暗だ。教職員用の昇降口から外を覗い、イルカは白い息…

#3 遠足弁当

それは毎年のことだった。寒気がほどけ、冬枯れた木々が息を吹き返す。昼が長くなり、無闇に悲しくなる冷たい夜が遠ざかる。風の冷たさに縮こめていた手足が警戒をといて伸びやかに動き出す。そんな頃にその行事は行われる。春の遠足。遠足といったって忍を養…

春、駒鳥たちは胸を血に染める。

 若い頃、といってもまだ若いつもりだが、カカシはモテた。忍びの世界では強い者が男女の別なく賞賛を受けるが、精鋭を選りすぐった部隊の中でも屈強な男達に混じる年若いカカシの細身の体や色素の極度に薄い髪の色などが異彩を放っていたせいだろう。幼い頃…

#2 秘伝チョコ

「なんだぁ、おまえら?」玄関を開けたイルカは頓狂な声を上げた。泥だらけの七斑一同が勢揃いしているのだから無理ない。「イルカ先生、カレー作って!」「はぁ?」カレーカレーと連呼するナルトから視線を上げて、カカシへ物問いたげな顔を向ける。「イルカ…