#16 ペーパーバック・キリマンジャロ
よく晴れた午後、木の葉商店街をてくてく歩くイルカの視界に見覚えのある猫背の背中が目に入った。書店の中でポケットに手を突っ込んだまま本を物色している後姿。「カカシ先生」大股でその人物に近づきながら声を掛けると、男は首だけ振返ってイルカを見つけ…
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#15 黒髪大吟醸
黒髪の男というのは、どういう遺伝的素因があるのか知らないが、どことなく艶めいた印象がある。のはなんでだろう。骨格が華奢だから?別に筋骨逞しい黒髪の男がいないわけではないのだが。例えば今年カカシと同じく下忍担当になった同僚の猿飛アスマとか。…
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#14 街道蕎麦
向こうの席のエロ親父がウザイ。行儀悪く卓に肘を着き、焼き魚をつつきながらカカシは肺の底から空気を吐き出す。とっぷりと暮れた日に火の国の国境近くの宿場で入った飯屋で奥の卓に座った成金臭いオヤジが傍らの、どうやら商売者らしい男をべたべたと触りま…
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#13 ひどい人焼きそば
イルカ先生はヒドイ。何度も繰り返されて、わけが分からないがだんだん腹が立ってきた。「さっきからあなたの言うことを聞いていると、アカデミー教師は娼婦かなんかみたいですね」厭味を含ませて言ったのだが、カカシは「娼婦!」と言ったきり絶句してしまっ…
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#12 居酒屋玉子
「玉子焼きかあ」ぼそりと呟いた言葉に、目の前の受付に座った中忍は「え?」と黒い眼を上げて訝しそうな視線をくれた。「ああ、」そうされて口に出して呟いていた事に自分でも気がついた。上忍のくせに我ながら弛んでいる。「ナルトがね、イルカ先生の穴子の…
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#11 再びカレー
「どーも」戸口に立った自分を見て、イルカ先生は驚いていた。あれ?もしかして、本当に来るとは思っていなかったのだろうか。場違いな空気を感じてカカシの首が斜めになる。でも来なさいって言ったのはそっちだ。あんな真剣な眼をしたくせに。だからカカシは…
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#10 亡者の塩
切り裂かれた皮袋から白い細かな粒が零れ落ちる。頭上から狭い渓谷沿いの道を進む荷馬車の一隊に矢が降り注いだ。敵のチャクラを感じると同時に足元の地面から土塊が突き上げ荷車が大きく傾いだ。馬が嘶き棒立ちとなる。反対側は川だ。積荷を落とすまいと味方…
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#9 娘道明寺
「イルカ先生、来ました」声をかけると先生は後姿でモフモフと咳き込んだ。「ああ、サクラ」スチール椅子をくるりと回転させて振り返った片手には小さなピンク色の和菓子が握られている。人を呼び出しておいて何をしているんだ。「これな、大羽先生の差し入れ…
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#8 居残りキャラメル
目の前に並んだ書類の束やファイルや先生用の本とか教科書とか。高すぎる椅子に足をぶらぶらさせながら机に肘を突いて白いままの紙に目を落とす。はあ。溜息。今日の授業でやったのは呪符の作り方。何も書かれていない和紙にお手本の呪符に書かれたのと同じ文…
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#7 中忍レトルト
乾物屋の店先でイルカは金色の缶詰を手にとって眺めていた。最高級の猫缶、通称・金缶。イルカの胸に一つの疑念がこびりついている。カカシの家のテーブルの上に積んであった猫缶。あの時、ぽぅっと頬を赤らめて視線を逸らしたカカシの珍しい様…
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#6 コヨーテテキーラ
彼らの飲み会に飛び入りする羽目になったのはたまたまだった。仕事が終わって一日分の任務報告書を整理していたら火影に伝令を頼まれた。上忍待機室を覗くと探し人であるアスマ上忍はまだ残っていた。夕日紅、はたけカカシ、 他に数名の上忍達もいた。紅が良…
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#5 上忍缶詰
敵も味方も分からぬような混戦のさ中、カカシは左目を覆った額あてをぐいと持ち上げた。暈けたピントが急に合ったように視界がくっきりとする。乱れる人馬の動きが手に取るように分かる。自分の中の何かが加速し、それにつれて周囲の動きがスローモーションの…
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