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春、駒鳥たちは胸を血に染める。

 若い頃、といってもまだ若いつもりだが、カカシはモテた。忍びの世界では強い者が男女の別なく賞賛を受けるが、精鋭を選りすぐった部隊の中でも屈強な男達に混じる年若いカカシの細身の体や色素の極度に薄い髪の色などが異彩を放っていたせいだろう。幼い頃…

#2 秘伝チョコ

「なんだぁ、おまえら?」玄関を開けたイルカは頓狂な声を上げた。泥だらけの七斑一同が勢揃いしているのだから無理ない。「イルカ先生、カレー作って!」「はぁ?」カレーカレーと連呼するナルトから視線を上げて、カカシへ物問いたげな顔を向ける。「イルカ…

#1 思い出カレー

路肩に停められた荷車の上で七班の下忍三人は口数少なくぼんやりと晴れた空を見上げていた。雲雀がピーチチチと高く高く昇っていく。春の陽は暖かく少し動けば汗ばむほどだ。捲り上げた袖も裾も泥だらけで、サクラは爪の間に詰まった泥を気にしている。班長の…

夢路

   懐かしい風の匂いがしていますあの扉から風が入ってくるのでしょう階段の踊り場に黄金色の日差しが差し込んでいます柔らかな光あの扉の外からそこでは空気の澱むことはないのでしょう乾いた風がずっと吹いています&nb…

月のうさぎ

巨大な洞窟を思わせる薄暗い地下室の板敷きの床にじかに座り込んで、いつものご とく、まったく何時でもどこででもそうなのだ、彼は夢中で本を読んでいた。人の背 丈の倍くらいはありそうな書架に囲まれた一隅、建物の地上に出ている部分に作られ た明り取…